薬を飲まされた!

2016.02.19


From:吉田幸生
秋葉原ベローチェより、、、

戻らない従業員

以前、お弁当を配達に行って、なかなか戻らない従業員がいました。
その日、午前10時。いつも通り配達に向かう時間です。
彼は、指定の個数をバイクの荷台にお弁当を詰め込みました。そして、これも、いつも通り銀のヘルメットを被って、バイクのキーを差し込みました。ブル〜んとエンジンがかかると、けたたましい音とともに「行ってきます」

でも、颯爽と出て行ったきりです。なかなか配達先から戻りません。
まだ、始めたばかりの店舗だし、食数も10食程度。そんなに時間がかかるわけありません。

あれ〜、事故でも起こしたかな?

と不安に思って、携帯に電話しても、全然応答なし…。
これは、おかしいなぁと思い、いざ、彼の配達ルートを辿って、探しに行こうかと思っていたら、ようやく従業員が戻ってきました。すぐに

「何かあったの?いつもより時間がかかってるから、心配しちゃったよ」
と声をかけて出迎えると、彼は開口一番、

「ひどい目に遭った」

と言いました。

薬を飲んだ?!

彼の話はこうでした。
ひどい目にあったというのは、配達先のことです。まだ、何回か配達した程度で、お付き合いを始めて間もないお宅でした。そのお宅では、お弁当を玄関ではなく、枕元まで届けるお約束になっています。

チャイムを鳴らし、玄関を開けて

「こんにちは。◯◯◯◯◯弁当です。」と声をかけると

「ああ、どうも。上がってください」

「失礼します」と彼は玄関で靴を脱ぎ、スーパーの袋みたいなビニールの手提げ袋に入ったお弁当を持って、ご利用者さんのお部屋に向かいました。

そこまでは、いつもと同じ手順だったのですが、そこからがちょっと違ったようです。

「ああ、こんにちは。お弁当屋さん、悪いけど、そこの薬を取ってくれないかな?」
言われるままに彼は薬の袋を、ご利用者さんに渡しました。

すると、そこからが衝撃の展開です。
袋から取り出した2種類の薬を配達員の彼に渡して、

「それ飲んでいってよ」

「えっ?」と彼は止まってしまったようです。
どんな薬かもわからないし、もしかして、自分の飲んでいる薬と相性が悪い場合だってある。だから当然、飲みたくないんですけど、

「早く飲んでよ!」
と、よくわからない催促を繰り返されてしまいました。

認知症

結局、彼はその薬がなにかわからないまま、飲んで、そのお宅を出たそうです。
どうも飲まないと帰らせてもらえない。感じだったのと、まだ、配達の途中だし、ここで時間を取られると、ほかへの配達が遅れてしまうと思って、やむなく観念したとのことでした。

まぁ、観念するまでには、10分〜15分くらいのやり取りがあったようです。が、結局、ご利用者さんを説得できずに、薬を飲むことを選択したとのことです。

その日のうちに、ケアマネージャーさんにも「ちょっと◯◯さん。様子が変でした」と報告したのですが、聞けば、その方は、その日の体調によって、認知症の兆候があるとのこと。

認知症の兆候と言っても、当たり前だけど、外見からは全然わかりません。
なので、こちらは普通に接しているのに、そういうことが起きるわけです。

ケアマネさんも忙しいし、ご自分が担当している高齢者さんであったとしても、四六時中、監視しているわけでもありません。

だからこの辺りの報告とかを、ほかよりちょっときめ細かくするだけで、ケアマネさんに喜んでもらえると思います。ご利用者さんの異常の早期発見につながるからです。

今時、民間のお弁当の配食サービスでは、高齢者の方の安否確認も兼ねている場合がほとんどですけど、なかには玄関先にお弁当を置いてくるだけ。という業者さんもいるようなので、これを読んでる方はそうならないようにしてくださいね。

そしてできればですけど、認知症などのついて、少し勉強してみるといいでしょう。
なんなら、ケアマネさんに質問してみてもいいです。
ある程度、まとまった時間をとってもらって、勉強会を企画してもいいし、参加してもいい。

自分が高齢者相手のビジネスをしている限り、避けては通れない問題です。
その道のプロとして生きていくなら、惜しくない投資だと思います。

PS.
さっきの報告の話、
ケアマネージャーさんからは、「教えてくれてありがとう」と、とっても感謝されて、信頼を得ることができた出来事になりました。

幸い、薬の副作用は出なかったのでよかったです。
でも「代わりに薬を飲んであげた」とまでは、言わなかったようですが…。
(ちょっと言えなかった…)

認知症サポーターやってます

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